文化対立と療育 

 文化差と発達障がいの問題には大きな共通点がある、と私は考えています。

 先日、共同研究者と一緒にやっている「文化理解の方法論研究会(MC研)http://rcsp.main.jp/mc/index.html」で、
明治大学の岸磨貴子さんに、彼女がトルコで頼まれて今模索中の「シリア難民とトルコ住民の対話的相互理解」のた
めのプロジェクトについて話をしてもらいました。

 トルコは人口が8000万のところ、350万以上のシリア難民が流入して暮らしていて、もとはオスマントルコという
一つの国だったと言っても、言語や文字などの文化の違いもあり、摩擦が深刻化してきています。その解決の道を探る
ということで岸さんが頼まれて模索しているんですね。

 前回MC研で話をしてもらったときに、僕らがやっている「異質な者同士の対話的な相互理解」に関する実践的研究
の視点から出したアイディアが彼女にヒットして、早速この春にトルコで新しいプログラムを実践してきたその報告
でした。

 その際、彼女が大事にしている視点、「難民支援」の姿勢が、研究所が発達障がい者支援について大事にしている
ことと基本的に一致していたのがとても面白かったです。

 ポイントは、相手を単に「支援される受動的な存在」と見ないところです。そうではなく、自分らしく主体的に生き
ていく模索を続けるひとりの人として見て、その人との新しいつながりを作り上げていく、というスタンスが完全に一
致するんですね。そこでは「支援する人」と「支援される人」の上下関係が生まれません。対等な人間同士の「共生」
が模索されるわけです。

 そういう新しい関係づくり(としての支援)を行うときに、彼女が「パフォーマンス心理学」の視点から大事にして
いることが「遊ぶ(=共同作業をする)」ということでした。一緒に楽しみを共有し、そこから創造的に何かを作り上
げていこうとする姿勢で、これが実際に今回の実践でもかなり効果を上げているのですね。この視点も研究所のスタン
スと共有されています。

 この春から、日系の子どもへの支援を頑張っている愛知・三重のみなさんとの定例研修が始まり、そこでは「発達障
がい」と「異文化」という二つの大きな困難を抱えている子どもたち、および療育や子育てについて違った考え方を持
っていて、また言葉もうまく通じにくいスタッフ間の関係をどう調整していくのか、ということについて考えていく作
業をしようとしています。

 そういうところにも直結するような、いろんなアイディアを岸さんの実践からもらいました。