北京師範大学での講義

 

 2月17日に北京師範大学国際与比較教育学院の主催で、「文化是什么?在哪里? 共同主观性的心理学」(文化とは何か、どこにあるのか。共同主観性の心理学)というタイトルで講義をしてきました。北京師範大学は教育系の大学として中国で最も古い歴史のある国家重点大学で、かつて魯迅も講義をしていたことがありますが、教育学にとどまらず心理学関係でも中国のセンター的な役割を持つ大学です。

 

 私は「異質なもの同士がどうお互いを理解し、共生していくことができるのか」という問題を、様々な角度から研究し続けてきました。現在大きな問題になっている、発達障がい者と定型発達者の共生も同じ課題の一部になります。発達障がいは「定型発達ができない人」という否定的な見方で見て、「どう補い、少しでも定型に近づくにはどうすればよいか」という発想でとらえてはならない、という考え方がようやく広まりつつあります。それは一種の「特性」なのであり、定型発達者と発達障がい者がお互いの特性を生かしあってどうやって共生できるか、が課題となっています。

 そのような共生のためには、「異質なもの同士の相互理解」の仕組みが非常に重要になります。今回テーマとして論じた文化の問題も、まさにその「異質なもの同士の関係」として見ることができる領域で、「文化」という言葉を「障がい」と置き換えれば、その話はそのまま発達障がいの問題に通じることになります。実際異文化間摩擦の発生、異文化不適応の仕組みと、発達障がい者と定型発達者の間に発生する様々な摩擦や不適応の問題は、構造的に非常に共通性が高く、どちらもEMS(拡張された媒介構造)の概念で統一的に説明可能な部分が大きくなっています。

 

 講義に続いて行われた研究会でのディスカッションでも、異文化間対立の構造と、定型発達者と発達障がい者の間に生じやすい対立関係の構造が極めて似ている部分があることも議論されました。文化差の問題も障がいの問題も、「生きるために与えられた基本的な条件」が異なるためにお互いの間にずれが蓄積し、そこに経済力その他の何らかの優劣関係がからんで問題を複雑にし、対立を深刻化させていく仕組みがあると考えられます。

 発達障がい児への支援は、どのようにしてそのような不毛な対立関係を少しでも減らし、お互いに長所を生かしあった生き方を作っていくか、という課題に向けて行われる必要があります。本研究所では、これからもそのような広い視点をもって創造的に支援の在り方を研究していきます。

 

 

 

 

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